本人の意志が必要なのは確かですが…
依存症の回復には、もちろん本人の意志が必要です。
「もうやめたい」
「このままではいけない」
そう思う気持ちは大切です。
けれど、依存症を長く見ていると、
それだけでは説明できない現象がたくさんあります。
本人も頭では分かっているのに、
どうしてもやめられない。
そういう場面です。
本人にまず必要なのは「現実を見ること」
回復の入り口にあるのは、
強い意志というよりも
現実が見えること
ではないかと思います。
自分の人生に何が起きているのか。
このまま進んだらどうなるのか。
それが見えたとき、
はじめて「やめたい」という意志が固まり始めます。
けれど、ここでまた別の問題が起きます。
依存症は脳を乗っ取る
依存症は、単なる習慣ではありません。
多くの回復者が言うように、
それは 脳に寄生する病気 のようでもあります。
理性的に考える脳と、
衝動を生み出す脳。
そのバランスが崩れると、
理性的な思考は簡単にねじ曲げられてしまいます。
例えばギャンブル依存の場合。
普通に考えれば、
ギャンブルだけで大きな負債を取り戻すことが
ほとんど不可能なことは分かっています。
頭では分かっているのです。
それでもなぜか
「次こそ取り返さなければならない」
という考えに強く引き寄せられてしまう。
「気づいたらそこに立っていた」
息子が以前こんなことを言っていました。
ある時点では、
今日はもう買わないと決めていた。
けれど、気づいたら
ディーラーの前に立っていた。
部屋を出たときには
そんなつもりではなかった。
そこに至るまでに何を考えていたのか、
自分でも思い出せない。
ただ、
なぜかそこに立っている。
そんな感覚だったそうです。
だから依存症は意志の問題だけではない
こうした話を聞くと、
依存症を「意志の弱さ」で説明することが
どれほど現実とかけ離れているかが分かります。
依存症の人の中では
理性的に考える部分と、
衝動に突き動かされる部分が
激しくせめぎ合っています。
そして時には、
衝動の方が勝ってしまう。
それが依存症という病気の現実です。
だからこそ回復には
本人の意志だけではなく、
現実を見つめること、
周囲の支え、
そしてなによりも
つながりの強化
そうしたものが必要になってくるのだと思います。

