「イネーブリング」という言葉が苦しかった理由

― CRAFTがこの言葉を使わない理由 ―

今でも覚えています。講義を受けているときに、私は号泣してしまいました。

それは、CRAFT (Community Reinforcement and Family Training) では
“Enabling(イネーブリング)”という言葉を使わない
という話でした。

代わりにこう言うのだそうです。

Unintentionally supporting substance use
(意図せずして、物質使用を支えてしまっている)

その理由を説明していたのが、CRAFTを開発した
Robert J. Meyers の授業でした。

理由はとてもシンプルでした。

“Enabling”という言葉は Pejorative(否定的・軽蔑的なニュアンスを含む言葉)だから。


ずっと感じていた「責められている感じ」

この説明を聞いたとき、
「ああ、やっぱりそうだったんだ」と思いました。

私はこれまで、「Enabling」という言葉を聞くたびに、
どこか責められているような感じを受けてきました。

  • あなたが悪い
  • あなたが依存を助けている
  • あなたの関わり方が間違っている

そんなニュアンスが、言葉の奥に含まれているように感じていたのです。

もちろん、理屈としては理解しています。
家族の行動が、結果的に依存を続けやすくしてしまうことがある、ということ。

でもその説明の仕方が、

「あなたが問題の一部だ」

という形になると、
家族は深く傷つきます。

なぜなら、家族はたいてい、
助けようとしているからです。


家族は「助けようとしている」

依存症の家族は、

  • 心配して
  • 何とかしたくて
  • 苦しんでいる本人を見捨てられなくて

いろいろな行動を取ります。

お金を貸してしまうこともある。
トラブルを片付けてしまうこともある。
言い訳をしてしまうこともある。

でもそれは、

依存を助けようとしているからではありません。

むしろ逆です。

助けようとしているからこそ起きる行動なのです。


CRAFTのやさしい言い方

CRAFTでは、だからこう言います。

Unintentionally supporting substance use
(意図せずして、物質使用を支えてしまう)

この表現には、とても大切な前提があります。

家族の動機は最初から愛である

という前提です。

家族は間違っているのではない。
ただ、結果が意図と違う形になることがあるだけ。

この説明を聞いたとき、
私は思わず涙が出ました。

「ああ、この言い方なら、人は責められない」

そう思ったからです。


言葉は人を救うことも、傷つけることもある

依存症の世界では、これまで

  • イネーブリング
  • 共依存

といった言葉がよく使われてきました。

もちろん、それぞれに理論的な意味はあります。

でもその言葉が、

苦しんでいる家族をさらに責めてしまう

としたら、どうでしょうか。

家族はすでに十分苦しんでいます。

だから私は、
CRAFTのこの姿勢がとても好きです。

家族を責めない。

むしろ、

家族を大切な回復のパートナーとして扱う。

この考え方は、
依存症の支援の世界にとって、とても大切な視点だと思います。